Rouge | J'adore

Rouge

今夜は急に電話があって、BFをお迎えに松山空港へ。
なんだか香港に5日ほど行ってて、1時間半後には松山に着くとのこと。
珍しく疲れてるっぽい声の後ろから空港のアナウンス。
「聞こえないよ」と電話口で彼が繰り返す。
今夜はボジョレーでも飲みながら、スタイリティックスのナンバーでも聞いてみようかと思ってたけど、かわいそうになって予定変更。夜の始まる空港へ。
出発ロビーから、もうすでに暗い空を見上げる。
18:45発東京行き。
もう十年以上行ってない、パリより遠い東京。
青いきれいなカートの女性の行き先はクリスマス前のパリ?

ふと原宿にあったオリンピアフードライナーを思った。
大き目のカートを引いて、外国の女性に混じり、ポップな外装の家庭用品を買ったっけ。そして1階のサンジェルマンでバゲットを買って千代田線に乗った。長い長い電車は龍のようにくねった。

そんなことを思っていると、関西空港からANA便到着のアナウンス。でっかいスーツケースの他に大きな袋を3つカートに乗せて、疲れた顔の彼が自動ドアから出てくる。
軽く手を上げる。
右の唇を少し上げて、微笑む。

「ごめん。無理言ったね。おわびに何食べる?」
そういいながら、おみやげの香水とスカーフ。ごめん、このピンクは似合わないわ。でも、このカオリは好きかも。
「肉」
「ステーキ?」
「いいね。」
二人並んで車に向かう頃、東京行きのJALが飛んだ。
「肉食べに行こう。」

彼は助手席から、わたしの膝をつねった。

肉以外に何か食べたいの?


「ずっと一人で仕事終わって、26階のラウンジで飲んでたんだ。周りはカップルばかりだよ。

香港は景気いいんだな。」

「そう。一人もいいでしょ。気楽でしょ?」

「確かに」


飛行機が飛び立つ音を聞きながら、環状線に入る。

「どのあたりのお店?」

「今夜は帰らないといけないの?」

「そういうモードじゃないから。」


「キスもだめ?」

「ダメ。rougeが取れるから。」

それはウソ。

今日のわたしはrougeなんてつけてない。

今夜のわたしは完璧に恋愛モードではないみたいだった。