あなたかもしれない
海に沈むまでの夕日と空のグラディエーションを楽しみながらコーヒーを飲みましょう。
今の季節なら夕日のショーが始まるのは5時。
だから、4時15分に待ち合わせしましょう。
その人からの誘いで、今こうして海の見える土手にあるcafeのテラスでコーヒーを飲んでいる。
小さなテラスから見える海をバックに若い女性が石段に腰掛けて、コーラを飲んでいる。
「今日の夕日は小さいね。赤い色も少ないな。」
彼が残念そうに言った。
「小さな夕日も秋らしくて控えめでしみじみしていい。赤のボリュームもgood。」
わたしは、ほんとにそう思っている。
あまりにもドラマチックで美しい夕日なんか二人で見てしまったら、物語のようにウソが散りばめられていそうで、消えそうで、
そんな出会いなんか信じられないから。
「また来たらいいんです。そうしたら違う夕日が見えるでしょ。」
彼の顔を見て、わたしは笑って言った。
夕日が消えて、深い紫の闇が周りを囲んでいること気にしないで、今までの人生を少しずつ語る彼の話を聞いている。
あなたの人生を知りたいとわたしが思っている。
こうやって話すあなたに会えたことは偶然ではないと信じ始めている。