虹色のボーダーライン
買い物帰りの道は、たぶん家路に向かう会社帰りの車で混んでいた。
エアコンの効いた寒すぎるくらいの空気が苦しくて窓を開けたが排気ガスのにおいが鼻につく。
信号待ちで空を見上げると、虹色のボーダーラインだった。
夏の終わりの夕焼けは、こんなにも華やかなグラデーションに染まるんだ。
「きれい。」
そう素直に思ったから声にして言ってみた。
オーレオリンな色からマゼンダカラーまで幾重にも重なるジョーゼットの薄いドレープが重なっているようだ。
重なり合うシフォンのカーテンを両手でかき分けながら進む自分を想像した。
手に触れる薄い滑らかな感触とふわりと手から離れるときの寂しさ。
薄い布が揺れるたびに小さな風が揺れる。
色が変わるたびに心も変わる。
わたしは何枚のカーテンをめくり、色のグラデーションの中を歩いてきたのかしら?
いつまでも恋する気持ちを忘れないなら、美しい色の中を自分は歩くことができると知っている。
たぶん終わらない。
今の恋が終わっても、また美しい色の恋のカーテンから風が吹く。
今もそう、風が吹いているのを感じている。
イランイランの香が甘くくすぐる。
たぶん新しい恋が始まりかけている。