33 I Wish Your Love 7
徳永は、小さな滝の流れる木立の中で車を停める。
トランクに積んであったキャンプ用の小さな折り畳みテーブルと椅子を手際よくセットした。
グリーンと白のギンガムチェックの布をテーブルクロスにする。
クーラーボックスから、よく冷えたアスティスプマンテを取り出して、
やっぱりよく冷えた、ルミナークのシャンパングラスに注ぐ。
ロゼの泡が細かく立ち上がって華やかだ。
「よく冷えてるよ。」
アユミに渡しながら、自分はペリエをデュラレックスのグラスで飲んでいる。
「ありがとう。」
その繊細な細い脚を持つグラスを受け取って、アユミは微笑んだ。
ハムとチーズのパニーニとスモークサーモン。
アユミの好きなくるみも山盛り。
殻をハート型した胡桃割のカッターで器用にむきながら、手のひらに渡してくれる。
「自然の中のバーね。最高に素敵。二人だけだし。」
「そうそう、元気になってきた。アユミは、やっぱりいい女だ。」
「いい女?」
「オレが保障するよ。」
「どういうところが?」
「一緒にいて気持ちいいところ。」
少し意味ありげに徳永が笑う。
「ふーん。」
シャンペンの泡をみつめながら、テーブルで頬杖をついた。
グラス越しに、二人はみつめあう。
静かな木々のささやきが聞こえるような気がした。
檜の香が体全体を包んでいる。
二人のいる場所までは太陽の強い光線も届かない。
車の音も、人の足音も聞こえない。
二人だけだった。
徳永が身を乗り出して、アユミにキスをした。
何回も何回も軽いキスを繰り返した。
アユミは目を閉じてシャワーのように気持ちいいと感じていた。