28 PRISM6
まるでイルカが戯れるように、ベッドの海を二人は泳いでいた。
いつもより時間をかけて、お互いを確かめる。
そして、やはりとても相性がいいことを確信する。
いつしかカオリは、穏やかな海を走る小さなヨットになっていた。
白い波飛沫をあげて、沖の小さな島に向かうヨット。
その島までたどり着けばいいのに、渦巻く波が邪魔をしてカオリをもてあそぶ。
それなのに、そのイジワルな波はとても気持ちがいいのだ。
「イジワル」
カオリは桧垣の肩を優しくかむ。
うっすらかいている汗のせいか、潮の香りがした。
「でも、素敵だからやめないで。」
「何が見える?」
「波のきらめきだわ。もう少しでその中に包まれそうよ。」
「二人で一緒に、その波の中に入ろうよ。」
白いきらめきの中、荒々しい波はさざなみに変わろうとしていた。
砂浜に打ち寄せては引き返す優しい音をたてて、波は引いていく。
あまりにも快くて目を開けるのがコワイ。
自分が微笑んでいるのがわかる。
「あなたが好き。」
自分の上に重なった桧垣の耳の後ろを愛撫しながら、ささやく。
桧垣の背中の汗を指でたどって、その指をなめてみた。
「海の味がするわ。わたしたちが泳いできた海ね。」
「もう一度、泳ぐ?」
「泳がせて。」
二人はもう一度、イルカになった。