22 I Wish Your Love 2
オーレオリンな夕焼けは、アユミの目の前に広がって、彼女を手招きするかのように輝く。
紺色のビスコースのワンピースは海からの風を心地よくはらんだ。
ルノーサンクの窓を大きく開いて、6月のシトロンの香を思いっきり車内に入れる。
オレンジの甘く切ない香は、恋する気持ちをますます高める。
今夜は一人でいたかった。
昨夜あんなに泣いたのに、今夜は一人でいることに慣れようとしている。
二人でいることが当たり前になってしまうと、昔の自分に戻れないような気がして怖くなっている。
彼の優しい腕に包まれることに慣れすぎると、一人の体でいることが不自然に感じそうで怖い。
徳永が優しすぎるから、よけいに自分が壊れそうだった。
徳永に抱かれると、なぜあんなに自分は柔らかく自由になれるのだろう。
そんな自分は自分らしくて嫌いだと思いながら、そんな自分を自由にする徳永を愛してしまう。
この夏が終わっても、自分は自分らしくいられるの?
アユミは少し暗く瑠璃色に輝き始めた海辺にルノーを停める。
暖かくなったボンネットに腰を下ろしてサングラスを外した。
首の左側に徳永の唇の余韻を感じてくすぐったくなった。
彼は、うつぶせになったアユミの首にキスするのが気に入っている。
目を閉じて小刻みに震えている表情が好きなのだと言った。
たしかに首から背中の中心に、彼の唇が這っていくと体の芯に甘い痺れを感じて、目を閉じて何かに夢中になっていく。
「いけない人ね。」
目を閉じたまま、アユミは徳永の右手を探した。
二人の合わさった右手と右手はいつしかひとつの線になる。
そして二人も一つになっていく。
カーテンが揺れる音と、つけっぱなしのFMラジオの音楽が二人の甘い時と重なった。
「癖になるかも。」
アユミは危ないと思い始めている。