21 I Wish Your Love
アユミは今日の現場でのやり取りを思い出していた。
柱の塗装が自分が指定したものとは違う、スエード調ではあってもキラキラした固い感じの塗料で
全く違うテクスチャーであったことが、どうしても許せなかった。
あの陶芸家の作品には似つかわしくない。
自分が指定したメーカーのものと違うもので無責任に塗らせた現場監督が許せなかった。
それにしても、現場の職人の前でおもむろに目を三角にして怒鳴るなんていうのはよろしくない。
自分らしくない行動だった。
結局、塗装はやり直しになった。
しかし、自分の指示の仕方も悪かったことをアユミは後で反省した。
人との距離を上手にとって生きていく方法を覚えなくてはいけないと思う。
あまりにもエキセントリックであると、周りも自分も疲れてしまう。
もう、わたしも若いとはいえないから、上手に生きていかなくては。
アユミは徳永の気持ちがほしいと思う。
「I Wish Your Love」なんて正直に言えたら、どんなに楽だろう。
「いつも僕は君の味方だから。
たとえ、みんなが君の敵になってもぼくは君を守るよ。」
徳永は昨夜、アユミを抱きながらそう言った。
南の海の香がする徳永の胸の中で、その言葉が響いた。
その言葉を信じたい。
「今、わたしはとてもあなたを望んでいる。」
窓を開けると、にじんだ月がアユミをみつめている。
月がにじんでいるのではなかった。
アユミの瞳に涙がにじんでいた。
I Wish Your Love・・・・・・・・・
好き・・・・・・・・